研究開発・知財活動活性化の‘カギ’は情報調査 〜情報調査セクションの戦略的取り組み〜
前号では、「研究開発現場での文献情報の活用」として「ご利用形態別の各種文献活用サービスの組み合わせ方」、「安心して利用できる企業向けの固定料金」をご案内いたしました。今号では、研究開発現場における文献情報の活用を実際に推進されている旭化成株式会社 知的財産部 技術情報グループ様の取り組みをご紹介します。本内容は昨年11月27日にパシフィコ横浜で開催された図書館総合展のフォーラムにおいて、同グループ長 中村 栄 様に「研究者に対する有益な情報調査関連サービスについて〜旭化成グループ情報調査セクションでの取り組みを通して〜」という演題でご講演をお願いしたものです。同社では、JDreamIIを情報調査ツールの柱としてご利用されていますが、単にツールの提供方法だけではなく、効果的かつ効率的に研究者を支援するための情報調査セクションの様々なミッションを縦横無尽にお話いただきました。
1.技術情報グループのミッション、運営体制
一口に情報調査セクションといっても各社その役割は千差万別ですが、まず、同グループの4つのミッションを整理してお話いただきました。
中村様によれば、左記図のように4つのミッションは独立したものではなく、それぞれが有機的に実施されることで大きな効果を発揮するとのことです。子会社スタッフの協力のもと、これら
4つのミッションを総合的に実施することで、
「旭化成グループ研究者の情報調査レベルの向上」を担っています。運営費用は、利用者である
研究者が支払う対価によって賄われており、その結果、ユーザの評価(利用の多少)が組織の活動予算に直結する形で業務運営を行っています。ご講演の中ではこうした運営内容から更に大学図書館の置かれている環境とも比較し、お話しいただきました。
2.各ミッションの具体的な実施内容
次に、4つのミッションの具体的な内容やそれらを遂行する上でのポイントをお話しいただ きました。
(1)専門サーチャーによる高品質な検索サービスの実施
同社では、研究者も情報検索を自ら行いますが、侵害性調査に代表される高い網羅性が要求される調査は同グループに依頼する様、調査目的による住み分けが徹底されています。調査の知財的判断を行う「知財リエゾングループ」というセクションがあり、重要調査の局面においては、研究開発部署−知財リエゾングループ−技術情報グループによる
「研究・特許・調査の三位一体の活動」が行われています。
(2)研究者利用の調査ツールの提供
同グループは研究者に対して
情報検索システム 「IRIS」という調査ツールを提供しています。 IRISは社内情報調査の基本的なインフラで、様々な商用データベースに対するポータル機能を持っています。IRISの提供を通じ、研究者自ら検索を行うことによる調査面でのモラル・スキルアップ、
研究者が予備調査を行うことにより、当グループのサーチャーが実施する重要調査の精度が向上するという効果が期待できます。
(3)調査結果の有効活用に関する指導
調査結果の有効活用を行うツールとして、戦略データベース「SDB」をご紹介いただきまし
た。SDBは、
調査結果に対して継続的に技術分類や重要度等の独自情報を付加したものであり、開発テーマ毎にSDBを構築・活用することにより、重複調査の排除、調査結果の有効活用に役立っています。
(4)研究者への情報調査教育の実施
研究者への情報調査教育は、技術情報グループにとって
利用促進、広報宣伝という側面もあります。「成功事例を宣伝することにより、良い意味でユーザ同士の競争心を刺激する」など、様々な工夫をご披露いただきました。このテーマは、大学、企業を問わず情報部門の方にとって非常に重要な課題であったようで、フォーラム参加者からも「非常に参考になった」との声を多数いただきました。更に、技術情報グループが実施する情報調査教育の次ステップとして「情報調査教育の成果を実務に結びつけること」とのご説明がありました。
3.セミナー主催者の立場から
中村様からは、「実施した調査の件数をいくら定量的にアピールしても意味がなく、調査結果がどのように研究開発や知財活動に役立ったかをアピールする必要がある」という指摘をいただきました。これは研究開発の現場の情報活用を進める部門の方だけではなく、サービスを提供するJSTとしても、常に念頭におく必要のある点であると考えています。JSTでも情報活用のためのサービスの開発や料金制度とあわせて、今後とも「活用成果、活用効果」を発信すると共に、利用者が意見交換できるような場を提供していきたいと考えています。