活用事例のご紹介【Case Studies】

各種JST製品を活用されている「ユーザの生の声」をお届けします。導入検討や活用方法についてお悩みの方へ、有効活用されている実例をご紹介します。
JDreamII
2009年12月25日現在

縁の下の力持ち 人気番組「ためしてガッテン」の陰にはJDreamIIあり
〜日本放送協会(NHK)「ためしてガッテン」 様

「食」と「健康」が二大テーマ

日本放送協会(NHK)。

東京・渋谷にある、日本放送協会(NHK)。
 NHKの人気番組「ためしてガッテン」は“人々の生活を豊かに”をコンセプトとして、1995年3月にNHK総合テレビにて放送をスタート。「食」と「健康」を二大テーマに掲げ、視聴者の「なぜ?」「どうして?」といった疑問を科学の視点から捉え、ユニークな実験で試し“合点”が行くまで徹底的に調査、視聴者にわかりやすく紹介することをモットーとしている。
 2008年11月には放送回数600回を数え、2009年で放送15年目に突入した、この長寿番組を陰で密かに支えているのが、番組制作に携わる多くのスタッフと、科学技術振興機構(JST)が提供する日本最大の科学技術文献データベースJDreamIIだ。
 2009年6月から同番組のチーフ・プロデューサーに就任した西田淳氏に、番組制作に際し、JDreamIIがどのように利用されているのか、番組の特性を踏まえつつ説明いただいた。

「人々の生活をより豊かに」が番組の目的

「ためしてガッテン」ロゴ

「ためしてガッテン」は、「ウルトラアイ(1978〜1986)」や「トライ&トライ(1986〜1991)」といった生活科学番組の流れをくみ、1995年3月29日に放送をスタート。NHK総合テレビ毎週水曜夜8時から放送。
 まず「視聴者は“科学”と聞くだけでも、分からない、なんだか難しそう、と構えてしまうことも。そこで、『ためしてガッテン』では美味しい食事、安心の医療といった身近なテーマを選び、科学に対するハードルを低く、難しい事柄を分かりやすく紹介するよう心がけています。ポイントは、視聴者に興味を持ってもらうこと。自分に関係あるかどうか、役に立つかどうか、視聴者は敏感です。そのために、日常生活や身の回りの出来事を科学的な実験や研究の裏づけを交えながら伝える。そうした研究などのエッセンスを抽出し視覚で見せるように、大型模型やパネル類の制作には気を配っています」と西田氏は口を開いた。
「また、放送の時点で最新のこと、確かなことを伝えよう、と。例えば、過去に扱ったことがある病気がテーマの場合、過去の回では発見されていなかった治療方法や新薬など、年月と共に変わったことも、新たな回ではきちんと伝えます。確かな情報で人々の生活をより豊かにすることが番組の目的ですからね」と続けられた。

番組出演者の目線は、視聴者の目線

(右)立川志の輔(たてかわ しのすけ)さん(左)小野文惠(おの ふみえ)アナウンサー

(右)立川志の輔(たてかわ しのすけ)さん。落語家という職業柄か「ゲストがどう思うか、どう反応するか」と、常にゲスト(視聴者)視点から番組を考える名司会者。
(左)小野文惠(おの ふみえ)アナウンサー。ガッテン放送3年目から担当。
 驚いたことに、3名の番組出演者(ゲスト)はぶっつけ本番、打合せさえ行っていないという。ゲストの反応=視聴者の反応と同じなのだ。司会の2人(立川志の輔さん、小野文惠アナウンサー)は本番同様に模型やパネルを使って番組を進行するリハーサルを行い、その後、スタッフを交えて打合せ、難しいところや伝わりにくい箇所を改善していくという。時には、模型やパネルを作り直すことも。「落語家の立川志の輔さんは常にお客さん(=ゲスト。視聴者)を意識し、お客さんの視点から意見を言ってくださいます。例えば、単に『腎臓にはフィルターの数が○個あります』といってもお客さんはどういうことか分からないよ、というように。一方の小野アナウンサーは、どう説明したら正確に視聴者に分かってもらえるかを意識し、リハーサルに臨んでいます」視聴者が楽しめる番組になるかどうかは、司会の2人の力によるところも大きいと、西田氏は繰り返し述べられた。

企画から放送まで3ヶ月〜3ヵ月半

  ではいったい、番組の企画から放送までの流れはどうなっているのだろうか。西田氏に、あらためて尋ねると「一つの企画(テーマ)は、ディレクターを中心にリサーチ専門スタッフなどでチームを組み制作にあたる」という。取材に2ヵ月(企画から構成作成を含めて)、ロケや収録・編集などに1ヶ月半と、取材にかける時間が長いのが特徴だ。
 「1人のディレクターが一つの企画を担当、約3ヶ月半かかりきりです。まずテーマ決めですが、ディレクターが見つけてきたネタを元にブレスト(ブレーンストーミング…複数人が集まって自由に意見を述べること)し、どうやったら番組になるかを全員で考えます。ただ、ディレクターのメモ程度のネタでも『これは本当なの? ちゃんと調べたの?』と突っ込まれるので、ブレストとはいえ裏づけを取ってないと大変ですね。ここで得た意見を元に、ディレクターはこの線で行けば合点(ガッテン=「なるほど!」と納得すること)するだろうという仮説をたて、構成を作ります。そのうえでさらに下調べや取材を行い、効果的な演出を考えてロケ、リハ、スタジオ収録、ポスプロ(ポストプロダクション…撮影終了後、編集等の全てのまとめ作業のこと)を経て放送といった流れですね。簡単に説明するとこういう流れです」と西田氏は言う。

いかに「ガッテン」できるかどうか

解説ボードも、JDreamIIで探した論文が根拠や裏付けとなって作られる。

こうした解説ボードも、JDreamIIで探した論文が根拠や裏付けとなって作られる。
 また、「15年も放送していると、だいたいのテーマはやっているので、常に何が新しいかを念頭におき、似ているテーマは切り口を変えたりします。重要な点は『そういうことだったのか!そういう視点があったのか!』というガッテンできる要素があるかどうかですね。論文や資料の内容をなぞっただけの企画では、難しい説明の連続となり、なかなかガッテンすることは難しい。視聴者が心の底からガッテンできるかどうかが、番組の最大のポイントなので、その点は本当に苦労します」と、番組制作のポイントを教えていただいた。  

ディレクターにとってJDreamIIは命綱

番組の収録風景

番組の収録風景。 前身番組からの積み上げと、視聴者の信頼を損なわない真摯な番組作りが評価された結果が、15年の歳月を超えてもなお視聴者に支持され続ける理由ではないだろうか。
 このように、科学情報番組という性質上、リサーチは企画の根幹に関わるため、非常に重要だ。担当ディレクターはJDreamIIをどのように利用しているのだろうか。
 「バックボーンの知識の多さや、取材を積み重ねる力が良いアウトプットに繋がるので、リサーチは徹底しています。例えば、薬を取り上げる場合、副作用はないか、海外で認可が取れているか否かなど、JDreamIIで検索したり、ジャーナルを読んだりして、一つずつ確認します。間違った情報をお茶の間に届けることはできませんからね。科学的な知見については、専門家(研究者)に取材する、国内外の論文をあたる、ディレクターはその繰り返しです。このように、JDreamIIは、仮説を立てて企画だしを行う時や、取材を進めていく過程で仮説とズレが生じた場合の方向修正にと日々活用しています。取材先から得た『このデータは○○の論文や□□で見たよ』といった情報や、リハーサルでの司会者から出た疑問の裏付けを取る場合にも使いますね。さらに、視聴者からの質問の答えを調べる時など、リサーチはずっと続きます。JDreamIIは、ディレクターにとって、番組制作にとって、JOISの時代からなくてはならないデータベースなのです」
 

国内の論文・文献検索が充実しているJDreamIIは心強い味方

  西田氏曰く「海外の情報は、コアジャーナルと呼ばれる各科領域で重要と思われる雑誌を中心に収集しています。また、必要に応じて業界専門誌を購入したり、図書館で調べたりすることもしています。一方で国内の情報はJDreamIIを中心に収集しています。科学系の論文データベースとして導入しているのはJDreamIIだけです。JDreamIIは収録文献数も5,100万件と大変多く、特に国内研究機関や国内研究者の論文や学術雑誌の記事が充実と、当番組制作の使用意図に合致しているツールなので、重宝しています。心強い味方ですよ」と、JDreamIIの必要性を述べられた。

原文献への快適なアクセスを希望

 西田氏は続けて、「原文献へのアクセスや電子データによる文献保存について、もっと使い勝手を良くしていただきたいですね。特に、原文献の複写を申し込んでから手元に届くのに数日かかっていますが、そのタイムラグをなくせないものかと。限られた制作時間の中、企画に関わる引用文献を決める際には、このような多少の時間のズレが後々響いてきます。著作権法との関係もあると思いますが、ぜひ時代の流れに即応したサービスを展開していただきたいです。よろしくお願いします」と、常に時間に追われている制作現場ならではの問題意識を挙げてくださった。

「ためしてガッテン」は、サイエンスコミュニケーションの旗手

 最後に、科学者や研究者は、科学のルールを研究・解明し、学会で発表することがメインであり、不特定多数の人に自身の研究を発信したり、自らが拡声器となり科学の楽しさを伝えることはなかなか難しい。その反面「ためしてガッテン」は、多くの人に“科学の面白さ”を“わかりやすく”伝えることができるのだ。まさに、JSTが提唱しているサイエンスコミュニケーションそのもの。言い換えれば、研究者と視聴者の橋渡しの役目を「ためしてガッテン」が担っているのではないだろうか。
 西田氏もサイエンスコミュニケーションについて同様の意見を持ち、「NHKは視聴者と科学者などの専門家をつなぐ媒体(メディア)です。番組を通じて、科学者の研究の成果を視聴者にわかりやすく翻訳して、ためになる情報を伝えられればいいですね」と、締めくくられた。
 これからも、視聴者が楽しめる番組制作を期待するとともに、JSTでは、JDreamIIをはじめとする文献情報提供サービスで同番組をバックアップしていく。

サイエンスコミュニケーションとは、科学の面白さや、科学技術をめぐる課題について、多くの人々に伝え、共に考え、人々の意識を高めるような活動の全ての総称。子どもたちを対象にしたサイエンスショーや実験教室、科学系博物館などの活動をはじめ、研究機関の一般公開や、研究者による市民講演会、サイエンスカフェなどの取り組みや、研究者と学校・メディア・行政などをつなぐ試み、地域のNPOによる活動も含む。最近は、特に、単に研究について解説するだけではなく、課題について共に考えていく双方向のコミュニケーションの重要性が強く言われている。
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活用事例のご紹介 科学技術振興機構